仙台のキラーナという美容室で美容師をしております。スズキユタカです。
わたしが普段サロンで使うカラー剤ですが、「スロウ」と「イルミナ」の二種類がほぼメインです。
どっちが良いカラー剤なのか聞かれることが少なくないので、私見を述べておこうかと。
スロウとイルミナ、どちらが上なの?
結果から言います。
スロウ、イルミナに限らずカラー剤に優劣は無い!
では、なぜスロウやイルミナが人気なのか。
他のカラー剤と何が違うのか。
結局どれで染めたらいいのか。
分からないことだらけですね。
スロウ、イルミナが人気の理由
これは色々あると思います。
まず第一に…
日本人の髪の毛では出しにくかった色が比較的出しやすい。
日本人の髪は赤みが出やすく、アッシュ・ベージュ・マット(オリーブ)などのいわゆる寒色系は出しにくいことが多いです。
スロウやイルミナはこの寒色系をキレイに出しやすい処方になっているため、それまでのカラー剤に比べて出しにくかった色が出せるという利点があります。
カラー剤単体で高彩度な発色ができるように作られているというのが他のカラー剤との違いです。
SNSやネットでの拡散
カラー剤のスペックだけではなく、今の時代に合ったプロモーションを行った、これもその一つの要因ではないでしょうか?
スロウより先行して出ていたイルミナカラーはInstagramのハッシュタグがついているだけでも25万件近くの投稿があります。
スロウカラーはわたしも参加させて頂いている「スロウジャーナル」というキュレーションサイトで全国の美容師さんがカラーに関する情報を提供しています。
こういったプロモーションも知名度を上げる要因になっていると思いますし、これ自体はカラー剤のスペックに直結はしませんがそれだけ仕上がりや製品自体のストーリーが伝わりやすいものだということではないでしょうか。
もちろん、スロウのメーカーであるビューティエクスペリエンスさんもイルミナのメーカーのウェラさんもある程度は狙ってやっていると思いますが、カラー剤自体に魅力が無ければこの結果は出ていないでしょう。
イルミナカラーはダメージしない?
よくお客様から聞かれることのひとつに「イルミナカラーは傷まないんでしょ?」という質問があります。
あんまりこういうの言うと良くないのかも知れませんが…
イルミナだろうがなんだろうが傷むもんは傷む
これはイルミナに限ったことではなく、カラー剤は基本的に傷みます。
マニキュアや一部のいわゆる特殊なカラー剤を除いては「ダメージ」という観点でみるとわたしが知りうる限りダメージしないカラー剤は存在しません。
ではなぜ、イルミナに関してそういうことが言われるのか。
イルミナは銅イオンに対するケアを考えた処方
銅イオン、なんだそれ?とお思いでしょう。
簡単に言うと、他のカラー剤では対応していないダメージの原因をケアできる処方になっている、ということです。
イルミナのメーカーであるウェラの方に確認しましたが、今のところそこをケアできるカラー剤はイルミナだけだそうです。
確かにわたしもイルミナのツヤ感や手触りは他のカラー剤に無いものだと思います。
ツヤ感や手触りとダメージは必ずしも直結しない
ここからは…
ちょっと書くか迷ったのですが…
わたしは、誤魔化しながらお客様に提供するみたいに感じてしまうので書いちゃいます。
イルミナだろうがスロウだろうが他のカラー剤だろうがカラーすれば傷みます。
いくらイルミナが銅イオンに対応していると言っても。
そして、それがどれ程の差が出るかと言えば正直そこだけでは他のカラー剤と圧倒的なダメージの差は無いと思っています。(あくまで私見ですが、ケミカルに詳しい知り合いの美容師さんと話してもそういう結論に至ることがほとんどです。)
先ほど、イルミナのツヤ感や手触りは違うと述べました。
それは評価していい部分だと思います。
思いますが、それがダメージしていないからという理由ではないと思っています。
イルミナにはツヤ感や手触りを良くする処方がしてあって、その結果が他との違いであってダメージの度合いとはまた別ではないかと。
カラーは破壊と創造で成り立っている
哲学的な見出しになりましたが、そもそもカラー剤は髪の中のメラニンを壊し、そこに染料を発色させて染まるように出来ています。
メラニンを壊すということは髪の中にもともとあるものを破壊するわけですから代償は伴います。
加えて、カラー剤が髪の中に浸透するためには表面のキューティクルをこじ開ける必要があり、そこにもダメージの原因はあります。
これを避けるには現状、特殊なカラー剤以外はありませんし、そういったカラー剤単体では大多数のお客様のイメージしている仕上がりを作るのは不可能です。
つまり、カラーとダメージは運命共同体であり陰と陽みたいな一対のものだと捉えた方がいいのではないかと思っています。
そして、そのダメージを最小限に抑えるにはカラー剤のスペックに頼るよりも美容師自身の塗布技術や毛髪診断能力を高める方がよほど効果的だと思います。
そして、仕上がり的な部分で言えば少しでも傷まないカラー剤を…とかよりも出したい色がきちんと出せるカラー剤を用いてダメージはトリートメントで補う、これでいいのでは?
カラー、手触り、ツヤ感…
全てをより高いレベルに持っていくのであればトリートメントをきちんとするというのは必須だと思います。
スロウ、イルミナ以外のカラー剤は?
スロウやイルミナにばかり言及してきましたが、それらに近い「高彩度」を実現できるカラー剤が出てきています。
最近ではミルボンのオルディーブ アディクシーあたりが話題ですね。
そういう仕上がりにニーズがあるということでしょうし、美容師側もそういったカラー剤を望んでいる時代の流れからだと思います。
結局、どのカラー剤がいいの?
つまり、美容メーカー各社がニーズに合わせたカラー剤を出していて、どこのメーカーも特色ある薬剤を世に送り出そうと尽力しています。
これはありがたいことです。
ただ、間違ってはいけないのはどのカラー剤を扱うにしても発色、ダメージもろもろ含めて結局は使う側によるところが大きく、どのカラー剤がいいのかを気にするよりもそのカラー剤をうまく使いこなせる美容師を探す方が大事だということです。
どのカラー剤にせよメリットもデメリットもあり、甲乙つけるのは難しいです。
乱暴に言えば、仮に「良いカラー剤」があったとしても「下手な美容師」が扱えば結局は良さなど出せないということです。
まとめ
カラー剤に限らず、美容室で扱う薬剤・トリートメントともそれぞれにコンセプトがあり、どれを使えば良いのかというのは一概には言えませんし、もちろんどの薬剤にも優劣をつけることは難しいし必要無いのでは無いでしょうか。
あなたに合わせたものをチョイスし、そのスペックを最大限引き出せる美容師さんと巡り合うことを求めて行ったほうが確実です。
わたしもそういう美容師でいられるように日々精進していきます…。
最後に、誤解のないように付け加えますがわたしはビューティエクスペリエンスさんもウェラさんもミルボンさんも他のメーカーさんも大好きです。
では!