仙台のキラーナという美容室で美容師をしております。スズキユタカです。
昨日、こんな記事を書きました。
これを読んでいただいた方から「AIでカットはできるのか?」という質問を頂いたので真面目に考えてみます。
AIで髪のカットはできるのか?
結論から言えば「できることはできる」んだと思います。しかも人間よりもある意味正確に。
ぼくら美容師はカットする際に頭の中に展開図というのをイメージします。
ヘアスタイルの設計図みたいなものですね。
これは簡単に言うと、どこの長さがどれくらいでどこからどこまでのカットはどの角度に引き出してその引き出したものを何度でカットするか、というものです。
つまり、数字を当てはめさえすればむしろAIの得意な部分。
あとは展開図を描くためには当たり前ですがどんなスタイルにしたいのか?が決まらないといけません。
これも世の中にある無数のヘアスタイルとその展開図をひたすら覚えさせればいけるんだと思います。いわゆるデータベース化してそれをパーツごとに細分化し、それを組み合わせさえすれば無限大のパターンを作り出す可能性は大いにあります。
次に似合わせの部分。基本的な理論みたいのはあるので(どこからどこまで長さの比率が〇:〇がベストバランスみたいな。)それをインプットさせておけば可能でしょう。あとはカメラなどでその人の輪郭やらパーツの配置を把握してそれに合わせたカットになるような仕組みが出来れば理論的な似合わせはクリアできます。
その他の頭の形がいびつだから、とか輪郭が…とか、毛量が…とか、そういうのも条件を読み取れてそれに合わせた対応ができるようプログラムされれば問題ないかと。
つまり、やりたい髪型がはっきりしていてAIが学習している範囲内の頭の形、毛量などなどの条件であればできるんじゃないかな?と。
ヘタすると、多少髪の痛み具合によってもカットの仕方が微妙に変えたりもしますが、それさえAIはセンサーもろもろで髪の状態を読み取って人間の判断よりも正確に判断できたり…
AIならシザーではなくレーザーとか水とか風とか何か人間では成しえないより良いカット方法さえ可能かもしれません。
ただ、ひとつ言えるのはAIは「キレイに、可愛くしよう」とは思わないということ。
ぼくら美容師は、時にはセオリーと違ったことをあえてする時もあるし、似合わせ理論でいけばこうだけど「ハズシ」として違うことをすることもあります。
AIは「理論に基づいてあなたにとって計算上1番似合う長さや角度、毛量がこれです」
ということはできるけど「あなたをより可愛くしよう!」と思っては切ってくれないということです。
あなたのその日、その瞬間の「気分」や「雰囲気」を察してはくれないし、「なんか雰囲気がどんよりしてるから今日の『ちょっと短く』はいつもより少しだけ長さと量を落としてスッキリしてもらおう」とかいう判断には至らないわけです。
「伸ばしたいから切りたくないけど雰囲気は変えたい」みたいなある意味矛盾した要望に応えられるのかも謎です。
そこはAIがいくら進歩しようとも、人と人との長年のコミュニケーションに相容れるものは無く、ヒトがヒトを切る唯一無二の理由、美容師の存在理由となり得るでしょう。
つまり、AIは情報、条件、計算においてベストなものを弾き出しその通りにカットすることはできるが、それは髪の毛という物質を切っているだけでありあなた自身をカットしている訳では無いということ。そこは心を持ったヒトにしか成しえない業です。
カットは「AI」よりも「愛」
ということですね。
おあとがよろしいようで。