仙台市青葉区のキラーナで美容師をしてます。スズキユタカです。
かれこれ10数年前、アシスタントだった頃働いていた会社はシャンプー指名という制度があり、未熟なりに自分が選ばれるということへの喜びを感じたくて技術はもとより、細かなところまで気を使って指名を頂こうとしていました。
その中で「お湯は熱くないですか?」の問いに「大丈夫です」と答える方の多さに違和感を感じて、本心では無いのでは無いか?本心を言ってもらうためにどうしたらいいか?を考えました。
出した結論は「お湯の温度、いかがですか?」に聞き方を変えました。この聞き方の方が熱いとかぬるいとか言いやすいのではないかと考えたからです。
そして、今は基本的にぼくはシャンプーの時によく繰り広げられるであろうこの決まり文句を聞きません。
「お湯は熱くないですか?(いかがですか?)」
「おかゆいところございませんか?」
理由はいろいろあるんですが…
ひとつは…
最善だという確信
専門学校の時、英語の授業があったんですよね。ちゃんと外国人(カナダ人だったかな?)の先生が教えてくれてました。
美容学校なので美容室での会話とかを英語で習うわけなんですが、その中に「お湯は熱くないですか?」というのもあったんですが、その先生が母国ではこんなこと聞かない、と。
お客様に合わせるのはプロではない、と、
なんかそれがずっと心にひっかかってました。
ぼくも海外(パリ)の美容室に客として行ったことがあるので、それが100%プロとしてのプライドみたいなものではなく、怠慢である場合もあるのは身をもって感じました。
ただ、ぼくなりに日本流に昇華させるとやはりプロとしてのこだわりとしてそこに行き着く選択肢もあると思うんですよね。
シャンプーの際のお湯の最適な温度は38℃前後です。でも、それってけっこう温いんですよ。人によっては気持ちの良い温度でない場合もある。
かといって、温度が高すぎれば頭皮への刺激も強いしカラー後のシャンプーなどではその刺激のせいで帰宅後のかゆみなどを引き起こす可能性もある(と思っている。検証をしっかりしたわけではありませんが…)
そこで、ぼくなりに気持ちよさを損ないすぎず、かつ刺激にならない程度の温度に調節しています。おそらく本当に心地よい温度より少し低めです。
それはぼくなりの理由がありその温度なので、「いかがですか?」と聞いて温度を変えることはしたくないわけで、むしろそれがプロとして最善の状態と判断してのことなので最初から確認をとっていません。
「おかゆいところございませんか?」に至っても同じで、特にカラー後などは微妙な色の出方などに影響する場合もあると思います。
気持ちよさを提供するのもシャンプーにとっては不可欠な要素なので排除はしませんが、ご来店からお見送りまでのトータルなヘアスタイルの仕上りとして考えた時に、必ずしも気持ちよさを最優先しない方がマクロな意味での美容師として提供できるクオリティに繋がると思っています。
自分を追い込む
これは完全にぼくの意地みたいなもんなんですが、「おかゆいところございませんか?」と聞いて指摘されたところを洗い直すのはプロとして大げさに言えばいわゆる「失敗」をしていると思うんです。
聞いて洗い直して、満足して頂いたと感じるのは簡単ですが、果たしてそれはプロとして一流か?
「いつまでもシャンプーされてたいわぁ」などというお声を頂くことはままある(もちろん他スタッフも含め)のですが、それも違うかなと。
一流ならば的確に短時間で満足させるのが一流たる所以なのではないかと。
もちろん、自分が一流であるという慢心など微塵も無いです。ただ、二流でいいのかと問われれば、はい とは言えない。
そんな自分に課したプレッシャーです。
あえて伺わず、シャンプーが終わったあとの一挙手一投足に敏感になり、どこかご不満な様子であれば物足りないなかったのかもしれない、と推し量る。
そういうあえての不確定要素から緊張感と改善策を常に感じていくことも大事かな?なんて。
仕上りの裁量
特にトリートメントなどのあとのお流しの場合などは流しすぎればベストな質感が出せなくなるわけで、もちろんすすぎ残しなどあってはならないのは大前提なのですが、例えば「平気なんだけどもうちょっと流してもらっておこうかな」的なご要望だった場合、逆にマイナス要素を増やす可能性が高くなるわけです。
そういったことのないよう流しながら質感を見定めている中での「もうちょっと」が必ずしもお応えすべきものなのか、という部分。
流し残しなどなく、かつベストな仕上り。
それが最終的に仕上がった時のご満足度が高くなりやすい。
あとはそういうやりとりに気を揉まずにリラックスして頂きたい、とかいろいろです。
美容師として最初に覚えた技術であるシャンプーひとつにもこういった想いを馳せながら日々自問自答しています。
突然何かをきっかけにまた変わるかもしれませんがその時はその時でまたごたく並べたいと思います。